August 31, 2011
─デビュー当時からビジネスとして小説を書いてきたと伺っています。今回は少し趣が違うのでは?
 
森 そうですね。ビジネスでの目的は既に達成されたので、そういう意味でも素直に書けたと思います。最初の頃は売れなければいけないから戦略があったわけです。もうこれ以上売れなくても良いと(笑)。だから好きなものが書けました。  
 
今、世の中にあるものは「多く売れるため」を第一義にしすぎていると思うんです。素直な創作ではない。ドラマや映画になりやすい、売れやすいものに傾きすぎています。小説でしか書けない、というものが必ずあって、それが極端に少なくなっているように見えます。映像化しにくいものこそ小説だと思えます。海外のミステリィ小説も、スピーディにストーリィが展開していくようなハリウッド映画的なものが好まれていますが、それなら最初から映画にすれば良いわけで、小説を書く意味がない。小説の世界観とは、作者の思考の展開から生まれるもので、なにかを体験したときにそれをどう抽象化するのかという部分だと思います。今、一般に言われている世界観というのはゲームの設定みたいなレベルですよね。小説家が持っている世界観というものは、そういった小道具、大道具のことではないのです。